国内では若手の労働人口が減り、多くの企業で新卒者を取り合っている現状が続いています。
株式会社リクルートキャリアの就職プロセス調査によると、2020年度の内定辞退率は66.9%と非常に高い水準となりました。
今回は学生の内定辞退と防止策に焦点を当てて、今からでも取り入れられる内定辞退防止の施策例もご紹介していきます。

参考:就職プロセス調査 (2020年卒) 【確報版】「2020年3月度(卒業時点) 内定状況」

学生が内定辞退をする理由はなにか?

内定辞退の理由

学生が内定辞退をするのは、単に競合他社が多いからではありません。
まずは学生が内定辞退をする理由について、掘り下げて解説していきます。

1. 他の企業からの内定が出ている

いちばん想像しやすいのが、他の企業の内定が出たため内定辞退をするというケースです。
最近では、卒業間近まで内定を複数保有しておいて、ギリギリになって内定辞退する学生も一定数存在します。

2. 企業に対する印象・評価がよくない


内定をもらったタイミングでは入社意欲が高かったとしても、内定から入社までの期間で企業の印象が悪くなったせいで辞退につながることもあります。
内定後のフォローが雑だったり、内定者懇親会に行ったら既存社員の雰囲気が悪かったり、インターネット上の会社の評判が悪かったり‥‥‥。
面接以外でふれる企業の情報から不信感を得て、内定辞退するケースがあります。

3. 家族の理解が得られない(オヤカク、嫁ブロック)

学生本人は入社したいと思っていても、家族や友だち、周囲の人から入社を止められることで内定辞退になるケースもあります。
中途採用ではよく「嫁ブロック」と言って、奥さんが旦那さんの転職先を拒むことがあります。
学生の場合は「オヤカク」と言って、就職先を親が確認することで内定辞退につながる場合があるのです。

4. もともと第一志望ではない

売り手市場が続く現代では、学生にたくさんの求人応募の機会が与えられています。
そのため、複数の企業を併願しており、もともと自社は第一志望どころか第一志望群にも入っていなかった可能性があります。
最初から入社する気はなく、滑り止めで受けている可能性があることを、企業は忘れてはなりません。

5. 情報量が少なく働くイメージがわかない

一応内定はもらったものの、入社までのスケジュールや、入社後の業務内容・一緒に働く社員などの情報量が少なすぎるため内定辞退につながる場合があります。
社会人の転職とは異なり、学生はそもそも働くことのイメージがまだつかみ切れていません。
「わからないことがわからない」という状態のため、学生からの質問を待っているだけでは、人事として対応が不十分でしょう。
学生が安心できるような情報を、定期的に提供することが重要です。

また、中途採用での内定辞退の理由としては、現職での引き留めが発生したり、希望していた労働条件(給与や待遇・業務内容)が合わないために辞退につながることも多いです。
新卒採用と中途採用、それぞれの内定辞退理由を理解しながら、対策をしていくことが重要です。

内定辞退を防止できない企業の特徴

内定辞退を防止できない企業の特徴

内定辞退の防止策にうまく取り組めていない企業は、学生とのコミュニケーションの量と質の面で劣っている可能性が高いです。
ここからは、内定辞退防止ができていない企業の特徴について解説していきます。
採用の募集時から面接、内定通知まで、各場面で気を付けて欲しいポイントを説明していくので、ぜひ自社の採用現場を思い出しながら確認してみてください。

母集団

就活の母集団形成のときに、ひたすら数だけを追い過ぎていませんか?
大量採用を行う企業では、応募数などKPIに注力をしすぎるせいで、1人ひとりの学生とのマッチング精度が下がっている傾向があります。
エントリー数を集めることも大切ですが、学生への対応の質が下がると、その後の内定辞退につながりやすくなります。

面接

選考フェーズでは、学生へ連絡をするときのスピード感や、面接官の印象なども重要ポイントになります。
応募から会社説明会への案内、選考に進んだときの面接日時の設定など、1つひとつのレスポンスを素早く行うことで「この企業はしっかり対応してくれている」と評価してもらいやすくなります。
また、面接時の面接官の印象は、学生が入社意思を固めるときの判断材料となるものです。
丁寧な対応を心掛けることはもちろんですが、あまりにも定型的・テンプレ化した対応は避けたいところです。
どんなに丁寧に対応していても、学生の印象に残らなければ、他の企業に学生の気持ちが動いてしまいやすくなるでしょう。

内定の出し方

内定辞退を防ぐためには、内定を出すタイミングや内定通知の方法も重要ポイントです。
まず、社内で内定通知を出す学生を決めたら、すみやかに学生にコンタクトをとりいち早く内定を伝えましょう。
学生は複数の企業を併願しているため、まずはどこの企業よりも早く内定を知らせ、印象付けることが大切です。

また、学生は複数の企業から内定をもらう可能性が高いので、徐々に内定をもらう嬉しさも半減していく傾向もあります。
他の企業の内定通知よりも印象を良くするために、内定を出した理由を伝えたり、内定通知書にメッセージを添えるなど工夫をしたりして、一緒に働きたい気持ちを伝えるようにしてください。

内定通知後のコミュニケーション(定期的に連絡をしているか・周りに魅力を説明する媒体を渡しているか・他社の選考状況を把握しているか)

内定通知を出した後、とくに内定式から入社日までの期間は内定者と丁寧なコミュニケーションをとることが重要です。
内定承諾をしたからと言って安心せず、定期的な連絡を行い、引き続き自社への動機づけを行うことがポイントです。

内定承諾をして欲しいからと言って、無理やり他の企業を辞退させることはNGですが、内定承諾をしてもらった後は必ず、他者の選考状況を確認するようにしましょう。

内定辞退防止施策として企業ができること

内定辞退防止施策

学生が内定辞退をする背景や、内定辞退を防止できていない企業の特徴を理解したところで、改めて企業が行うべき内定辞退防止策を確認していきましょう。
ここでは新卒採用者と、中途採用者に分けて対策法をご紹介します。

新卒採用の内定者向け

新卒採用の内定者向けに取り入れられる施策について3つの方法をご紹介します。

1. 内定者インターン

学生に内定通知を出したら、内定承諾の有無にかかわらず内定者インターンを案内する方法です。
内定者インターンを行うことで、社内メンバーとの交流機会を作り、社内の雰囲気や実際の業務理解につなげます。
メールや動画などで情報を伝えるよりも、実際の現場でインターンを行う方が、学生の受け取る情報量が増えて効果的です。

2. 内定者とコミュニケーションをとるメンター制度

内定が決まったら、内定者1人ひとりにメンターをつけて丁寧なフォローアップをする方法です。
人事担当者だけで複数名の内定者フォローをするのは大変であり、質の部分で不安が残ります。
そのため、内定者1人ひとりに専任のメンター(世話役・相談役)をつけることで、内定者の不安を解消していくと良いでしょう。

3. 内定者研修

内定者インターンと同時に実施したいのが内定者研修です。
研修を通して、内定者に働くイメージをつけてもらうとともに、入社してからやりたいことの言語化をすることで辞退防止につなげます。

中途採用の内定者向け

続いて、中途採用の内定者辞退を防止するための施策例を2つご紹介します。

1. 今回の転職の意向を現場に伝えているかの確認

中途入社者の場合は現職で引き留めに合う可能性があるため、内定通知後は必ず、現職に転職の話をしたか確認をしましょう。
内定を出せば絶対に入社してくれるわけではありません。
油断をせず、入社日まで丁寧なフォローを行うことが大切です。

2. 勤務時間や休日休暇等についての情報を積極的に開示する

内定を出した後は、必ずオファー面談を実施して、現実に即した労働条件(給与・待遇)などを細かく伝えましょう。
中途入社者は、給与や待遇、勤務地などの労働条件に折が付かず辞退する傾向があるため、1つずつ口頭説明のうえ労働条件通知書は書面で提示するようにしてください。

内定辞退を改善した企業事例

内定辞退を改善した企業事例

最後に、内定辞退率を改善した企業の事例についてご紹介していきます。

1. 従来の就活面接を廃止した事例

主婦向けの求人サービス「しゅふJOB」を運営するビースタイルでは、就活の概念を変えて内定辞退率を下げるため、独自の取り組みを実施しました。
具体的には、昔からの就活スタイルであるリクルートスーツや面接、お祈りメールを廃止することで、学生とのマッチングを促進し内定辞退率0%という成果を出されています。

参考:株式会社ビースタイル

2. 適性テストや研修強化をした事例

某大手サービス業では適性テストやエンカレッジという研修プログラムを導入することで、内定辞退率を7割から3割に下げることができました。
内定通知タイミングで「この企業で働く意味」をしっかり伝えられていなかったことが、高い内定辞退率の要因と考えた同社。
内定時に、「あなたは入社後、このようなスキルを伸ばした方がいいよ」とアドバイスをしながら、個人の能力に合わせたエンカレッジの講座を提案しています。

参考:某大手サービス業

3. こまかな内定者フォローの実施

株式会社ジェイックでは2002年~2012年の間で内定辞退者が1名しか出ていないそうです。
同社が取り組んだ内容は、こまめに内定者フォローを実施するというシンプルなもの。
イベント翌日の電話フォローや、誕生日・クリスマスなどイベント時のメール、社内SNSや社内報の活用など、どれも今すぐ導入しやすいものばかりです。
人事担当者の負担にならない程度に、こまやかなフォローをして学生との接触回数を増やしていくと良いでしょう。

参考:株式会社ジェイック

まとめ

人口減少、売り手市場が続く中、内定辞退は企業が向き合うべき重要課題のひとつです。
新卒者も中途入社者も同様に、複数の企業の内定をもらったうえで、どこに入社するか決めていきます。
母集団形成時、面接、内定通知、内定通知後の各場面で、まだまだ企業が改善できる項目はあるはずです。
コミュニケーションの質と量に注意しながら、内定辞退対策にぜひ励んで行ってください。